2020年卒の大学生から人気のあった企業
2020年卒の大学生の就活も、依然として安定を求める傾向が強くなっており大企業を志望する大学生が多いです。
経済指標が上向く中でも中小企業の業績は回復しておらず、こうした背景を色濃く反映する状況となっています。
特に2020年卒の大学生の人気を集めたのが、金融系の企業でした。
特定の事業の先行きには不透明感が漂うため、メーカーなどの特定の事業ではなく、あらゆる分野の成長によって収益が上げられる大手銀行などに人気が集中したようです。
みずほファイナンシャルグループ、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行の大手三行が全て、人気ランキングのトップ10に入るという人気ぶりです。
また、一時期の大不況を脱した航空系の人気も高くなっています。
新聞やテレビなどで日本企業のグローバル化が叫ばれるなか、大学生にとって身近なグローバル企業である航空系が選ばれているようです。
ANAとJALの2社が揃って人気ランキングのトップ5に入っており、その人気ぶりは明らかです。
さらに、航空系への関心の高まりに合わせて、旅行大手に注目する学生も多かったようで、JTBグループも僅かにランキングを上げています。
逆に人気が下がっていたり、停滞した企業
金融系と航空系が上位を独占した2020年卒の大学生の就活ですが、その一方ではIT系企業への人気が停滞している様子も明らかになっています。
大手かつIT系であるNTTデータがかろうじて人気ランキングの30位内に顔を見せるものの、今後の企業としての成長が見込まれているソフトバンクグループが50位にさえ入れないなど、一時期の人気に陰りが見えてきました。
さらに前年との比較で特徴的なのは、損保系の保険大手の人気が急激に下がり、ランキングを落としていることです。
東京海上日動火災保険が前年2位から6位へと下落、また三井住友海上火災保険は前年8位から14位へと下落しており、さらに損害保険ジャパン日本興亜は前年3位から19位へと大幅に下落しています。
インターネットのセキュリティ関連や、ビットコインに代表される仮想通貨への適用など、最新技術との相関も高いことから業界としては成長が期待されるものの、就活の現場においては不振でした。
最近の傾向として
以前は花形産業として人気の高かった商社系は、徐々に復調の気配です。
こちらは金融系と同じく特定の産業カテゴリに含まれず、様々な業界で収益を生むことができる事業構造に対して安心感が感じられた結果です。
商社系の大手4社は前年、10位以内に1社も入らないという状況でしたが、2020年卒の人気ランキングでは伊藤忠商事が7位にランクインしたのを筆頭に、三菱商事が9位、三井物産が15位、丸紅が21位となりました。
業界内での規模や順位ではなく、日常生活の中で触れる機会の多い事業やサービスを提供している商社に関心を持つ傾向にあるようです。
最新市場動向としては、やはり長期的に安定感が見込める大企業への関心が高まっており、大学生たちが現実志向で企業を見ていることが感じられる動向になっています。
スマートフォンの普及によって情報化社会を迎え、価値観の多様化が進んでいるとの分析がされている昨今ですが、そうした傾向を感じ取ることは出来ませんでした。
終身雇用は望まなくなってきた
ただし、こうしたランキングからは読み取ることは出来ませんが、まずは大手に就職して経験や知識などを習得することを希望するものの終身雇用を望んでいない学生が増える傾向にあることは否定できません。
以前は、どこの大学の出身であるかが個人の生涯を決める重要な要素のひとつとなっていましたが、現在では大企業の出身であることを肩書きとして個人で活躍するフリーランスや企業経営者が多く、さらに大企業への求職に大量の人材が集中する事態を加速させているようです。
つまり、上位にランクインしている金融系や航空系は、今後の時代に必要不可欠な知識やノウハウを得ることが出来る企業であるとの認識が広まっていることを表しています。
社会的に問題となった天下りのような組織的な人材の流動性ではなく、あくまで個人が活躍できる時代において肩書きとして活用できる企業であることが、就活の現場においては重要とされているようです。
なぜそうなったか
このような背景には、やはり家電系の電機メーカーが世界的な競争についていけず崩壊してしまったことを目の当たりにした学生たちにとって、これからの社会人生活の50年あまりを1つの企業に依存し過ぎないようにするという警戒心が見え隠れします。
大手を志向しているという安定感の裏には、将来の不透明感を敏感に感じ取った個々の人生戦略があり、主体性を持った就活が行われたことが確認できます。
企業としてのブランドイメージを高めることで就活で人気を集めるという時代は過ぎ、個人の成長をどれだけ手助けしてくれる企業であるのかを明確に感じられる企業への注目が集まっていることが、2020年卒における最新市場動向であるとまとめることができます。
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