就職氷河期を乗り越えて
大学生の就活と聞くとつい就職氷河期のことを思い出して気の毒になりがちですが、最近の就活事情はガラリと様変わりしていることをご存知でしょうか。
何と、2021年卒の大学生の就活は非常に恵まれ、完全なる売り手市場になっているのです。
売り手市場とは、大学生の数に対して採用を希望する企業が非常に多く、大学生側に選択権が与えられている状況を言います。
従来の就活では何とか採用してもらおうと大学生が奔走していましたが、近年では企業側の方が何とか大学生に入社してもらうと頑張っている状況なのです。
ここ数年の就職率は年々過去最高を記録しており、国が調査した2016年卒の学生の就職率は97.3%を記録しています。
大卒のほぼ全ての学生がどこかの企業には内定をもらえたということであり、いかに引く手あまたになっているかが分かります。
学生にとっては非常に恵まれた環境になっており、ひと昔前の就職氷河期が嘘のようです。
ただ、気になるのがこの売り手市場が2021年卒の学生まで続くのかという点でしょう。
どんなに前年までが売り手市場だったからと言って、来年まで社会に経済的な大問題が起きないとも限りません。
リーマンショックのような経済に大ダメージを与えるような出来事が起きれば、あっという間に買い手市場に戻ってしまうでしょう。
2020年卒まで売り手市場が続くのか、現在の就活状況はどうなっているのかを知っておくことで、いざという時に慌てずに済みます。
近年の採用の背景
2021年卒の就職活動の売り手市場は、現在でも続いています。
昨年まで5年連続で大卒の求人倍率は上昇しており、求人総数自体も右肩上がりになっています。
高水準を保っており、企業が引き続き高い採用意欲を持っていることが分かります。
その背景には、近年になってようやくリーマンショックのダメージから回復して業績を伸ばし始めた企業が増えたことが影響しています。
円安や政府主導による経済活動の活性化などもあり、業績が好転して事業拡大を計画する企業が増えているのです。
事業拡大を目指した場合、真っ先に必要になるのが将来を担う優秀な人材です。
中途採用ももちろんですが、若い頃からじっくり教育できる新卒採用は特に人気があり、企業も力を入れて採用活動に乗り出しています。
最近は円安も一段落し、輸出業を中心に前年までより減益を予想する企業も増えていますが、まだまだ採用についてネガティブになるとまでは言えません。
今後更に経済の停滞が見られれば採用計画を大幅に見直す企業も出てくるでしょうが、今のところそこまで深刻な状況になっている企業は多くはありません。
特に大企業は引き続き採用に力を入れることが予想されており、2020卒の採用も同じく売り手市場になると考えられます。
団塊世代がいなくなる
また、団塊世代の一斉退職という問題も影響していると考えられます。
人口の多い団塊世代は、近年一斉に定年を迎えて会社を去ってしまいました。
今後も人口の多い世代が続々と定年を迎えるため、労働力や社員の構成バランスが大きく崩れてしまいます。
さらにリーマンショックの頃にリストラを敢行して採用を抑えていたこともあり、団塊世代が退社した後の管理職や幹部候補が圧倒的に足りなくなってしまったのです。
もちろん全ての企業がそういう状況にあるわけではありませんが、こういった過去の反省点を踏まえて安定的な採用を継続しようとする傾向が強くなっています。
経済状況が著しく悪化した場合は採用を絞ることも考えられますが、大企業を中心に多くの企業が中長期的な構造改革や採用計画の見直しを行っており、安定した人材確保を何より優先していると言えます。
このため、新卒学生の争奪戦はまだしばらく続くと考えられています。
大企業が率先して採用するなか、中小企業は…
この状況下で、特に厳しい採用活動を強いられているのが中小企業です。
もともと学生は大企業志向が強いことに加え、大企業の方も続々と採用を増やしているので優秀な人材が中小企業に流れてこなくなりました。
若者の採用を希望しているのは大企業に限ったことではなく、当然中小企業も将来のために若い人材を欲しています。
少しでも学生に応募してもらおうと、セミナーやイベントなど涙ぐましい努力をして人材を確保しようとする企業も珍しくありません。
また、企業だけではなく学生側にも変化が見られ始めています。
これまでは企業の規模や給与、知名度に安定性などを重視して就職先を選ぶ学生が多かったのですが、近年ではいわゆるホワイト企業に人気が集まる傾向にあります。
国も積極的に働き方改革を進めている近年では、給与やステータスよりもいかに自分のライフスタイルを崩さず楽しく働けるか、福利厚生がしっかりしているかを重視する学生が増えているのです。
いかに大企業と言えど、残業が酷かったり人間関係が厳しい企業は学生から敬遠されることも珍しくありません。
優秀な人材ほどその傾向が強いとも言われており、企業としても社内改革を進めて学生に好まれる企業になることが必要不可欠になっています。
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